かやぶき屋根

かやぶき家屋には、どこも華美なところはありません。日本風家屋のことを写真や絵で紹介するきれいな本が各国語で出版されていますが、そこでは、細かな部分まで精巧につくられた美しい建築物が紹介されています。これらの建築物は、洗練した生活スタイルと美的な研究を求め、簡素さを深めるために時間とお金を費やした人々が設計し、またそのような人のためにつくられたものです。

かやぶき家屋は、これらの建築物の中では田舎の貧しい従兄弟(いとこ)だと言えます。つまり、貴族や町の住人に食糧を供給するため田畑で厳しい労働を行って生活を送った貧しい農村の人々のための家屋なのです。そこでは、贅沢を避けることが重要なこととなります。しかし、日本人の生活の基本的な発想は、かやぶき家屋にすべて反映されています。例えば、外見やデザインの上で自然的要素が十二分に使われていること、台所の場所と機能、玄関と居間。

さらに、地方の貧しいエリアにおいても、お花やオブジェなど、美をあらわすものを飾るスペースが確保されています。かやぶきの屋根は、一つの大きな居間を覆っています。その一方には、土間の高さに玄関と台所があり、もう一方には、畳による居間が土間より高くに備えられており、中央の屋根の梁(はり)を中心に横滑りの扉によって4つの部屋に分けられています。これらの扉は、木の枠に両側から紙が貼り付けられて出来ています。これによって視覚的にプライバシーが確保されるのです。しかし扉と天井の間には広い空間ができることになり、鍵もありません。風呂と納屋は、別の棟となります。

組み合わされた梁が家屋を支える役割を果たしており、横梁は、しばしば、自然のままの曲がった松の木を熟練した大工さんが加工して、木をまるごと使っていることがあります。壁は、藁を細かく刻んだ小片を混ぜた泥土から出来ており、両側から乾燥させるために竹の格子が中に入れ込まれています。その他、屋根の基本構造を支えるために、何本かの木材が結び付けられています。また、厚さが60センチにも及ぶかやぶき屋根を支えるために、竹が縦横に結び付けられています。木材、竹、土、茅といった建築素材は、すべてその場所の身近なところで自然の中で手に入れることが出来ます。家屋のどこにも釘は使われておらず、相互に組み合わされたり、藁の縄で結び付けられており、これは台風や地震に対して弾力的で強力な構造をつくることとなります。とは言え、何百年維持しようとは考えられていないし、そのようには建築されていないので、家屋はいつか壊れて、すべてが再び自然に戻ることとなるのでしょう。

私たちの家(住居)は約150年の古さですが、この地で最初に建てられたものではなく、梁も、その前に一度使われていたものが組み込まれています。私たちがこの家を引きとった時は、まだ納屋と手動ポンプのついた井戸、それに土間の台所と玄関、薪で下から温める仕組みの鉄製の浴槽がありましたが、私たちはこれを改造して現代的な施設に置き換え、2階のスペースの半分を寝室に利用するため階段も設けましたが、残り半分のスペースは週末に訪れるその友人のための部屋を作るため、居間のスペースを増設しました。さらに私たちは、コンサートをするスペースとして、もう1棟の建物を加えました。それは禅のお寺を移築したもので、「かやぶき音楽堂」です。聴衆250人の収容が可能です。田植えの季節には、手伝いをしてくれる友人たちがたくさん集まり宿泊をするのですが、この建物のおかげで、10人や20人、あるいはもっと大勢の人々が手軽に泊まって食事をすることができます。私たちは、時々、何週間もここを離れることがあるので、その間でしたら理解のある方々に建物全体をレンタルすることも考えております。ここでは、暑さの厳しい日本の夏を涼しく過ごすことができます。かやぶき家屋にしばらくの間過ごしてみたいと思われる方は、ぜひ御連絡ください。(1週間、またはそれ以上の場合。ゼミナールなどにも適していると思います。)

 

かやぶき音楽堂全景
かやぶき屋根