1998年 第1回かやぶき音楽堂ピアノデュオ連弾コンクール
-京都府船井郡日吉町胡麻-

開催要項

企画・提案

エルンスト&和子 ザイラー

後援

京都府/日吉町/オーストリア大使館/アメリカ総領事館/(財)日本ナショナルトラスト/関西ドイツ文化センター/日独文化研究所/水資源開発公団/日独協会

協賛

関西電力京都支店/西日本旅客鉄道株式会社/Lufthansa/UNITED AIRLINES/ネスレ日本/ザ・リッツカールトンホテル大阪/オーストリア造幣局/大関株式会社/株式会社益田/スタインウェイジャパン株式会社/スワロフスキー・ジャパン株式会社/小杉商事株式会社  他

趣旨

 世界には多くのコンクールがあり、日本国内にも多くのコンクールがあります。若い音楽家を激励するという意味でコンクールは非常に有意義なものであり、また、成長した音楽家がより高度で完璧な演奏をめざして努力するための良い契機となります。そこでは、賞、あるいは人々に実力を評価してもらうこと、そしてプライドを持つことが、コンクールに参加する動機となります。しかし他方では、ほとんどの参加者は、受賞から漏れ、自信を失い、時にはその上に友人や家族からさげすまれたりすることもあります。
 音楽は、他のいかなる活動と比較しても、独自の大きな意味を有しています。それは、「すること」それ自体の中にも存在します。音楽の曲を学ぶ過程?最初に耳にし楽譜を読むところから始まり、それを演奏して楽しみ、友人や聴衆者を楽しませるに至るまでの過程?の中にも、音楽をする意味があるのです。
 「ソリスト(独奏者)」というものは、極めて近時に生まれてきたものです。歌ったり踊ったりという行為は、人々がともに楽しむものであり、それらが実は音楽のまさに起源なのです。
ソリストは拍手喝采のためにしています。しかし、踊ったり歌ったり演奏したりすることには、リズムやハーモニーを共有して友人達の中にいるという、安心と喜びの気持ちがあり、拍手には関係がありません。音楽というものは、競争する行為ではありません。ですから、コーラスのコンクール等ということは極めて滑稽なことなのです。しかしコンクールによって、ソリストは、さらに練習を重ね技術を磨くことになりますし、コーラスのコンクールでは、人々が集い、ともに歌い、リズムとハーモニーを合わせ、楽しむことになります。
 ピアノは孤独な楽器になりがちです。ヴァイオリン、フルート、あるいは歌手は、共有者を求め、ブラームスのソナタやシューベルトの歌曲を演奏するために、パートナーが必要となります。一方、ピアニストは、右手でメロディーを歌い、左手で伴奏するのですが、それですべての部分を満たしているのです。それにもかかわらず孤独です。

 ピアニストが他の楽器とともに演奏すると、しばしば、ただ伴奏者だという感覚を持たされてしまうことがあります。2台のピアノで演奏するためにパートナーを探すことは容易ではありませんし、一緒に練習する機会も限られてきます。そもそも一軒に2台のピアノを持っている家はそう多いとは言えません。また、2台のピアノのために書かれた曲も限られており、それらは華麗なヴィルティオーゾな曲であるのが一般的で、愛好家が演奏するには難しく、しばしば内容に乏しいものもあります。
 どんなピアニストでも楽しむことのできる室内楽における一つの形式が、1台のピアノを2人4手で演奏するピアノ連弾です。これは、かつてもっとも幅広く演奏された室内楽の一つです。 ヨーロッパでロマン派音楽が全盛を極めていた時代、家庭にピアノがあり、ピアノを弾ける人も幾人かおり、ともに音楽を奏でることは当時好まれたくつろぎ方だったのです。ピアノ連弾用には、オリジナル、編曲を合せ、驚くべき数の曲が作られています。実際、あらゆる交響曲、弦楽四重奏曲、三重奏曲、オペラ、セレナーデ等、あらゆる曲がピアノ連弾のために編曲されています。というのは、その種の音楽が大きな市場を有していたからです。
 長い年月が過ぎる中でこれらの楽譜は出版されなくなり、今では、大きな都市や大学の主要な図書館でしか見られなくなっています。しかし、有名な作曲家によるピアノ連弾用のオリジナル曲は、楽譜店で手に入れることができ、新しく素晴らしい出版がされています。日本の出版社からも、最近では結構出版されており、ピアノ連弾がだんだんポピュラーになってきていることを示すものであります。今回このコンクールの課題曲は、楽譜店で簡単に手に入るものばかりです。
 室内楽が開花する時として、今、日本は理想的と言えます。ヨーロッパのロマン時代のように、日本でもほとんどの家庭にピアノがあり、少なくとも一人は大変上手に弾ける人がいます。しかし、実際には、多くのピアノが調律もされずに放置され、弾かれることがありません。それは、音楽の素晴らしさではなく、技術のことばかりを教えられるからです。ソリストとして自立することを達成できなかった演奏者は、音楽学校の卒業生でさえ、ピアノを続ける目標を失ってしまっています。ここにこそ、今回、ピアノ連弾コンクールが新たに興奮を与えようとする点があるのです。ピアノは改めて調律し直され、課題曲を見るために共に集まるでしょう。その過程で、音楽を共に作る楽しみやそこに存在する意味に気付くでしょう。難易度の異なるグループA、B、Cを用意したのは、どんな経歴の持ち主でも、ピアノを演奏できる人なら応募できるようにという配慮です。
 以上の趣旨により、私どもは、皆様に、できるだけ広くご案内いただき、生徒さんやお友達にこのコンクールについてお話しいただき、これに応募されるようよびかけてくださることを、お願い申し上げる次第です。

1998年4月
第一回かやぶき音楽堂ピアノデュオ連弾コンクール
企画提案者 エルンスト&和子 ザイラー 実行委員会及び事務局一同

第1回かやぶき音楽堂ピアノデュオ連弾コンクールは終了いたしました。
デュオコンクール